箱をひらくと、インクの甘さと角のすり減りが立ち上がった。
楽しかった時間は、紙に保管されていた。
1|二日間だけの“帰郷”

9/16・17限定のイベント「Back to EXPO 1970」へ。
昨年から少しずつ追ってきたEXPO’70の資料たちと重ね合わせるように歩いたら、胸の奥がじんわりと温かくなった。——正直、もっと長くやってほしかった。
2|資料を、もう一度ひらく

千里ニュータウンや万博の記事を書いていたご縁で、
1970年大阪万博の実物資料群を譲り受けた。
この場を借りて、改めて——ありがとうございます。
ページをめくると、紙の匂いがふっと立つ。
ページの擦れ、角の丸み、綴じ糸の沈黙。
どの一枚にも当時の熱がきちんと残っていた。
- ソ連館のパンフレットは3種類。教育・医療の無償、スポーツの誇り……1970年の言葉が直球で未来を語る。
- カナダ館の刷りは紙がやわらかく、国名に馴染みの薄かった時代の空気がにじむ。
- イタリア館の資料は重厚。レイアウトの端々に「見せる誇り」が漂う。
- レインボータワーの入場券には手書きの時刻。「この時間においで」。
いまはアプリ、QRコード。55年の距離を指先で確かめる。





※本文の表現・数値は当時の資料に基づく紹介として、その温度のまま引用しています。
3|ハンカチに刺繍された「万博十か条」
手元の記念ハンカチには、楽しみ方の十か条が書かれた冊子が同封されていた。
読み上げると、いまにもすっと馴染む。

- 進歩と調和を感動と楽しみのうちに謳歌する世界旅行
- 珍しい乗り物・遊戯に満ちた冒険旅行
- 門外不出の芸術が集う鑑賞旅行
- 世界の民芸・珍品に出会う買い物旅行
- 自然・科学・宇宙・未来の学習旅行
- 参加できる体験旅行
- 各国の産業・文化に親しむ国際旅行
- 各国のお国自慢の料理を歩き食べできる味覚旅行
- お年寄りでもラクにまわれる世界旅行
- マイカーで行ける世界旅行
スタンプラリーが収集心に火をつけ、楽しみ方は無数に分岐する。
万博はやっぱり**“万(よろず)”の博覧会**だ。

4|私のアプローチ
私は、文章を書く。写真を撮る。動画を編集してYouTubeに載せる。
それも一つの道。入場者の数だけ楽しみ方の数がある、と資料をめくるたびに思い出す。
余談:かつて万博は新製品・技術・文化を世界へ示す“発表の場”。収支より開催そのものが名誉——この原点も、忘れたくない。
5|“歩く映像”で55年前へ
会場では1970年の街並みを歩くような映像が流れていた。
人の歩幅、旗のはためき、フィルム粒子の揺れ。
日本館のロゴが手元のパンフと同じ書体で立ち上がる瞬間、
1970年の大阪万博会場内にいる感覚になった。
ラストの花火は、映像なのに少し熱くなる。
そして、静かに確信する。
入館しなくても、思い出は作れる。
外観の曲線、素材の手触り、看板の影、昼→夕→夜に移ろう時間の色。
並べなかった日も、外から拾える幸福がたしかにある。
6|「言葉のツボ」に託した一行
屋外では、万博に寄せる一言を書いて大きなツボに投じる催しがあった。
私が入れた言葉は、ただこれだけ。

やってくると、何かしら思い出は作れる。
この紙片が大きなツボと焼き上げられると思うと感慨深い。

7|おわりに──時間を拾いに

大屋根を歩くだけでもいい。夕暮れに立ち会うだけでもいい。
それらをこうして配信する。
未来の誰かの資料になるかもしれないから。
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