2025年大阪・関西万博にて、
ひときわ立派な外観を見せるパビリオンが目の前に現れました。
その名も「アゼルバイジャン・パビリオン」。
中に入ると、なんと観客は私ひとりだけ。
それだけに、この空間との“対話”がとても濃く、記憶に残る体験になりました。

パビリオン内部でまず目に入るのは、7人の女性像。
「これはいったい何を意味しているのか…?」
係の方によると、これはアゼルバイジャンを代表する詩人・哲学者
**ニザーミー・ガンジャヴィ(1141〜1210年)**の代表作『7人の美女』をモチーフにしているとのこと。
この作品は、彼が生涯3度目に結婚した“女性奴隷”との出会いから着想を得て書かれたそうです。
身分制度の厳しかった当時において、奴隷と結婚するという行為は極めて異端。
しかし彼はそれを貫き、
**「人を身分でなく、“人間そのもので”見る」**という思想へと到達しました。
イスラム圏では女性の地位が低かった時代にあって、
この考え方は非常に革新的だったようです。
それゆえに、現代のアゼルバイジャンでは
「世界で最も早く女性の尊厳を訴えた哲学者」として
ガンジャヴィは国民の誇りとされています。

ところが――
現在のアゼルバイジャンでは、**女性の社会的地位が“あまりに高くなりすぎた”**という現象も起きているとか。
聞くところによると、
YouTubeなどで“全裸で配信する女性パフォーマー”が話題になり、
**「女版 江頭2:50」**と呼ばれて問題視されたこともあったそうです。
強くなりすぎた女性たちが、身体を張って社会と向き合う。
それもまた、進化のかたちなのかもしれません。
とはいえ、元をたどればすべては
「一人の哲学者が放った、“人間を人間として見る”思想」から始まっているのです。
パビリオン内の展示では、
アゼルバイジャンが日本の柔道文化に深い敬意を持っていることも紹介されていました。
壁には、現地の柔道選手たちと日本の師範の交流の様子が写った写真が飾られており、
静かに、しかし力強く「文化の橋渡し」が感じられました。
【まとめ】
「人を見るとき、私たちは何を見ているのだろう?」
アゼルバイジャン・パビリオンで過ごした時間は、
そんな問いをそっと心に置いてくれる体験でした。
観光気分では見過ごしてしまうような深いテーマが、
シンプルな展示の奥に隠れています。
人は何によって測られるのか。
万博という“未来”を考える場所にぴったりの問いかけだと思います。