自分育て

#2 第一部 内なる力の発見

自己発見と自立

1.食物連鎖から精神連鎖へ

私たちはよく、動物界の食物連鎖について学びます。

簡単に言うと、草木を食べる草食動物、それを狩る肉食動物、
そして死んだ肉食動物が草木の肥料に戻る、
という自然界の完璧なバランスです。

このバランスは、
どの要素も増えすぎても減りすぎてもいけないという繊細なもので、
自然の織りなすアルゴリズムといえます。

しかし、現代の人間社会は、この食物連鎖のバランスが崩しているが現実です。
1920年に約20億だった世界人口が、今や80億を超え、

森林は減少し、多くの動物種は絶滅の危機に瀕し、
また実際に絶滅しています。
人間は自然界の食物連鎖から脱線し、
環境破壊の主役となってしまったのです。

ここで私が言いたいのは、環境破壊問題ではありません。
問題は、人間社会に独自の「食物連鎖」が存在するということです。

人間も動物の一種として、本能に従って生きると、
知らず知らずに弱い者を食い物にするような行動に出がちです。

私たちはしばしば、
他者を支配しようとする低レベルの会話や利益を得るための騙し合いに陥ります。
このような行動は、社会全体の不和と不幸を招くことに他なりません。

たとえば、職場や社会において、
強者が弱者を支配することは日常茶飯事です。
上司が部下を支配し、大企業が小企業を圧迫し、富裕層が貧困層を利用します。
従って誰もがポジション争いで少しでも優位に立とうとします。

良い学歴、職場、立場、
これらは結局食物連鎖の頂点である肉食動物のような
より上のポジションを目指すために努力しているのです。

しかし、本当の意味での成長と自立は、
このような支配から離れ、
互いに支え合える関係を築くことから始まるのではないでしょうか。

その為にも私たち一人ひとりが、
この人間社会の「食物連鎖」にどのように関与しているのかを
自問自答することが重要です。

自己発見のスタートは、自分がどのように他者と関わり、
どのように社会の一部として機能しているかを理解することです。

また自立とは、単に他者に依存せず生きるだけではありません。
何故なら、「他者に依存せずに生きる」という解釈での完全自立などあり得ないからです。人間は誰もが何かしらの世話になっています。

ここでいう自立は、自分自身の能力を知って、活かして、伸ばして
自身でコントロールして生きていくことを意味します。
実はこのコントロールするという事が非常に重要なのです。

あなたの周囲で自営業者やフリーランスでいつもやたらに元気な人がいませんか?何故、彼、彼女たちはいつも元気なのでしょうか?

対して、いつも疲れているサラリーマンの方、
週の始まりの月曜日に憂鬱な表情を見せる同僚はいませんか?
そして彼、彼女たちは何故疲れているのでしょうか?

その理由の一つに、自分のペースで行動する選択権が多いことが挙げられます。

誰もが自分のペースで行動する方が、
他人のペースで行動するよりもパフォーマンスは上がるはずです。

あなたの生活が寝る時間、起きる時間が自分ペースになる事を想像してみましょう。恐らく多くの人の元気度は上がるように思います。

この自分の心地良いペースを知る前に、
ほぼずべての人が強制的に学校教育によって、
人に合わせる習慣を身につけます。
そしてそれが当たり前だと躾けられるのです。

自分の気持ちよく生活できる周期を知ることは、
自分自身の能力を知る第一歩となりえます。

もちろん、明日から自分のペースで生きると言うことは、
普通の人には難しいと思いますが、
少しずつ自分のペースで生きられるよう自分を観察する事が
スタート地点に立つ事では無いだろうか。

この章では、どのようにして自分自身を発見し、
自立した生き方を選択できるのかについて探求したいと思います。
自分の内なる力を見つけ、
それを育み、社会の中でいかに生かしていくか。

そのための第一歩は、自分自身の行動とその影響を深く理解することから始まります。
それが、真の自己発見へとつながる道です。

草木のように生きる人、
草食動物のように生きる人
肉食動物のように生きる人
人は何も考えずに生きると、
食物連鎖のようないずれかのポジションで生きることになります。

自分の力を見出すことは、
この縛られた生き方階層から自分を解放する手立てなのです。