【null²|ヌルヌル体験記】
“こんにちは”から“さようなら”へ――「死」を明るく見つめ直す万博の最前線

こんにちは、万博太郎です。
今回ご紹介するのは、落合陽一さんプロデュースの話題のパビリオン「null²(ヌルヌル)」。
先に結論を言えば――
これは「死ぬこと」すらも、軽やかに、前向きに捉えるための哲学的アトラクションです。
テーマは難解ですが、内容は驚くほどシンプル。
私は「何度も2001年宇宙の旅を観た」という個人的な素地もあり、
この体験に明確な“物語の核心”を感じました。
【ダイアログモード】“意味”を手放す準備運動
まず私が体験したのは、ダイアログモード。

パビリオンに入ると、言葉による説明の代わりに
「“意味”や“執着”を捨てて、いまの自分を一度解体してみてください」
というようなメッセージが、映像と音で体を包み込みます。
映画では黒く光る四角い「モノリス」――
(これは、映画『2001年宇宙の旅』に登場する象徴そのもの。)
それがガラス面のような画面に包まれたピカピカの四角いモノリスとして登場します。

映像は次第に抽象的になり、「あなたは何者か?」「名前があるから苦しいのでは?」と問いかけてきます。
まるで“死ぬことそのものを、柔らかくシミュレーションする装置”のような体験。

「気をつけてください、落ちますよ、、、」は死にますよの意。
だけど、「動くのは上にいるぼくのしごとですから」は死なないようにコントロールするのはあなた方には無理。上の仕事、天のみぞ知るの意(私たちは中途半端に賢くなったことで、寿命をもコントロールできると錯覚していることに対する当てつけ)

大量の蝶
蝶は「メタモルフォーゼ」、つまり変態、変身を意味します。
ここから無数の蝶が飛び立ちます。
展示の最後には、1970年大阪万博で流れていた三波春夫の「世界の国からこんにちは」が、
「2025年のさようなら」というパロディソングに変わり、やさしく送り出してくれました。
【俯瞰ゾーン】
“体験中の自分”を外から眺めるというもう一つの視点
ここからがnull²の本領発揮です。
次に進むと、さっきまで自分がいた「モノリスの部屋」をガラス越しに見る構造の部屋へ。
つまり、「自分が体験していた風景を、今度は外側から見る」という二段階構成。
これは衝撃的でした。
なぜなら、今まさにその部屋で体験している人たちが、
私たちと同じように「うわ、何だこれ…」と困惑した表情をしているから。

私たちはそれを、まるで科学者が観察するように、俯瞰して眺めるのです。
「人生も、こうやって見下ろせたら、ちょっと笑えてくる」
実際笑えて仕方がなかったです。
生意気に言うと、やるな落合陽一!と思いました。
そして、妙な静けさと余韻がありました。
【インスタレーションモード】
今度は、光の中で“生まれ変わる”
幸運にも、私はダイアログモード終了後すぐに、
もう一つの「インスタレーションモード」を体験することができました。

今度はモノリスの部屋には入らず、俯瞰ゾーンからスタート。
やがて、モノリスの空間に投影される幻想的な光のショーが始まります。

まるで『2001年宇宙の旅』でボーマン船長が“スターチャイルド”へと進化する直前の、
万華鏡のようなシーンをリアル体験しているような感覚。
そこに、私自身の瞳の映像が重なって投影されます。
そう、私自身が“宇宙を見つめている存在”であり、
同時に“宇宙に見つめられている存在”になっているのです。


分かりづらいですがサブリミナル効果のように自分の瞳が映り込みます。
これまでの人生で見てきた事、体験してきたことをギュッと凝縮してインストールしていると思うととても面白いです。
2001年宇宙の旅で暴走するHalをボーマンが止め、
木星到着後、光に包まれるシーンがある。
あのシーンを体感させてくれていると思えば分かりやすいでしょうか?
私は今、ボーマンなのだ。
あのシーンをまさに味わっているのだ。
そして、この後、老いていって
果たして「スターチャイルド」になるのだ!
ターン、タターン、タターン、
ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン・ドン
(ツァラトゥストラはかく語りきー交響詩)「日の出」
正直、ちょっとゾクッとしました。

無数に現れる扉の向こうに、
“死”を経て、再び「何者か」として生まれ変わる、そんな過程のようでした。
“null”דnull”とは何か?
nullとは、プログラミング用語で「空(から)」を意味します。
仏教でいう「無」にも近い概念。
そして「null²」は、その“空”をもう一段階深くした状態。
意味も、名前も、肩書きもいったん全部捨てて、もう一度、“まっさらな自分”に戻ってみる。
そういう禅問答のような構造を、体ごと味わわせてくれる不思議なパビリオンなのです。
まとめ|null²は“死と再生”の万博的問いかけ
null²で語られる「死」は、絶望ではありません。
それは、執着を手放し、
もう一度“軽やかに生きる”ためのリスタート。
“こんにちは”から始まり、“さようなら”で終わる。
そして、また“こんにちは”へ向かう。
人生の円環を、哲学的かつテクノロジーで表現した、
異色だけど本格的なパビリオンだと感じました。
ツァラトゥストラはかく語りきは哲学者ニーチェの名著です。
魂は何度も輪廻する。
物体の循環が叫ばれている昨今ですが、このパビリオンは魂の循環、
そして壮大な宇宙の循環を表現していると感じました。
おすすめの人
- 人生に疲れてる人
- 死を怖いと感じている人
- 『2001年宇宙の旅』が好きな人
- “意味”や“自分”を問い直したい人
- テクノロジーと哲学の交差点に興味がある人

何のことか分からないあなた、
null²に行くなら、
2001年宇宙の旅をぜひ見て下さい。
ニーチェを調べるのもいいかもしれません。
私の分かる範囲で解説させていただきました。
もっと謎解きができている方、教えていただけますと幸いです。