もしかしたら、これがお互いの最後の作品
そんな決意があったのかもと思われる
バーニーとエルトンとの
関係そのものを表したような作品群
とにかく命を懸けた息吹を感じる
この時期、エルトンは才能の爆発で3,4か月で1枚のペースで発表。
そんな中、本アルバムは何と2枚組である。
しかも、一曲たりとも埋め合わせというような歌はない。
エルトン・ジョンという二人の人間の作り出したスーパーヒーローの
最高傑作という呼び声高いアルバムでもある。
エルトンのメロディーの素晴らしさばかりが先行しがちだが
バーニーの詩にも注目してほしい
二人の合作はあまりにも調和している。
魂のハーモニーを感じます
その二人が作り上げた作品群です
「Goodbye Yellow Brick Road」のアルバム像
このアルバムタイトルは収録曲がそのままアルバムのタイトルになっている。
エルトンジョンとバーニートーピンは、
二人で作ってきただけあって、
テーマが一貫しており、
アルバムが一つの作品となっているのだ。
そんな丁寧なアルバム制作の中で、
「Goodbye Yellow Brick Road」は何故17曲もの作品による大作になったのか?
それは、これら17曲全てが、
夢に描いてきた世界に別れを告げる作品であり、
様々なシチュエーション別の「Goodbye Yellow Brick Road」なのだ。
恋愛や華々しい業界、
社会や学校、
それぞれに失望、もしくは再スタートを心に決めて
出発するある意味「悟りの道」の作品群なのだ。
そう考えるとそれぞれの「Goodbye Yellow Brick Road」が深みがあり、
あなたもどれかの作品に心惹かれるというか、
あなたの歌「Your Song」があるはずだと思うのであります。
※「Your Song」は皆への応援歌を歌っていきますというエルトン&バーニーの誓いの歌
それぞれの曲の詳細は各作品のブログページで紹介しています。
ここでは軽く作品に触れております。
1曲目「Funeral for a friend」~「Love Lise bleeding」について
この素晴らしきアルバムのオープニングを飾る
このド迫力の曲
歌は「Love Lise bleeding in my hands」であるが
この詩を見て
エルトンは思ったのだろう、
バーニーからの関係均衡の不協和音
初めに会った時からの阿吽の呼吸が崩れてるぞ
しかも修復できない所まで来てるぞというメッセージ
あぁ、俺のバーニーへの想いも切れつつある
のぞむところだ!
そんな気持ちの「Funeral for a friend」友への葬送曲
そして、それは同時に自分の為の葬送曲でもある。
やっぱり芸術は命懸けであり、
だから人の心を打つのだと
そう思い知らされる曲。
ライブでは
オープニング曲として登場する事が多い。
ライブ前、照明が暗くなり
この曲の序章
風の音、
鐘の音が聞こえると震えるほど気分が高まる
エルトンの登場に心臓バクバク
エルトンはこの曲をオープニングにしていたのは、
毎回毎回、ライブ会場を自分の死場所と心得ていたからだと語っている。
2曲目「Candle in The Wind」について
エルトンとマリリンモンローの孤独さをダブらせた作品
バーニーがそれを上手く組み取り
その後、ダイアナ妃の孤独をも代弁してくれた
感情移入して聞くと
こういう魂がこもったものを歌と呼ぶのだ
とさえ思ってしまう。
華やかな業界にさようなら
3曲目「Bennie and The Jets」について
現代の神は
ミュージシャンかもしれない
勇気、元気、夢を与えてくれる
最高にイカシたアーティストの演奏とグルーヴが
ここに詰まっている
そんな作品
馬鹿馬鹿しい学校や親の決まり文句の言いつけからさようなら
4曲目「Goodbye Yellow Brick Road」について
アルバム名にもなっているこの曲
イエローブリックロードは
夢に描いていたサクセスロードのはずだったが、
実際は「絵に描いた餅」であり
クダラナイ欲と見栄にまみれていた
あぁ、そんな道とはおさらばさ
バーニーからエルトンへのメッセージであり
エルトンの感情をも表現している
これはYOUR SONG同様
音楽のキュービズムといえよう
聞けば聞くほど
深い深い作品
全ての人が経験するであろう現実を目の当たりにした失望。そしてお別れを告げる作品。
5曲目「This Song Has No Title」について
題名のない歌
似たようなテレビ番組が昔あった記憶があるが
題名を付けてしまうと
テーマと言うか
言いたいことが固定されてしまう
そうでなくてもバーニーの詩は
分かりにくいように書いていると本人も語っている
この歌も題名を付けたら
ああだこうだと直ぐに結論付けられそうだから
あえて題名を付けなかった
生きる意味を考えるように
聞いてそれぞれ考えてね、
そんなバーニーのメッセージのように感じる
くだらない社会にさようなら
6曲目「Grey Seal」について
学校って何?
社会って何?
何の為に賢くなるの?
そんな誰もしっかりとした答えを言ってくれない素朴な疑問を
海辺の灰色アザラシに問いかける歌
あなたも猫とか犬に
「お前は幸せやなぁ、、、」って聞いたことありません?
私はあります、、、
洗脳教育にさようなら
7曲目「Jamaica Jerk-Off」について
気楽にいこうぜ
ラテンの軽快な生き方を歌った歌
こんなノリだと
ノイローゼとかPTSDとかなくなりそう
こちらは「Goodbye Yellow Brick Road」のさよならしたその先の歌。
8曲目「 I’ve Seen That Movie Too」について
映画というより
君との思い出のシーンがまだ繰り返されている
述懐の歌
酷い仕打ちをした恋人との訣別の歌。
だけど本気でさよなら出来ずにいる自分。
恋人なのか自分の執着なのか、未練なのか
さよなら未満の微妙な作品
深い
9曲目「Sweet Painted Lady」について
売春を題材にした作品
金で買ったとは言え、
甘美なひと時
所詮男と女なんてこんなもの
美しいメロディーと歌声で表現
きらびやかに見える男女の世界を
どんな男女関係も所詮こんなものと
ロマンスとのさよなら
10曲目「The Ballad of Danny Bailey(1909-34)」について
若くして死んだ反逆のヒーロー
ダーニー・ベイリー(ジョン・デリンジャー)のバラード
出てくるデリンジャーは銀行強盗で鳴らした
伝説のギャング、ジョン・デリンジャー
映画「明日に向かって撃て!」を見ると
何となく背景が見えてくるだろう
時代が作り出したヒーローとそして残った伝説
後に国家により書き換えられた歴史
それらを全て胸に刻んで
ケジメをつける作品
11曲目「Dirty Little Girl」について
2曲前の「Sweet Painted Lady」で売春婦との時間を題材にした作品があったが
今度はその売春婦をズタボロに書いた詩
しかし、この作品をそのまま解釈してはいけない
人に寄生して生きようとする
心に対しての罵倒なのだ
寄生やろうとさようなら
ビートが効いて
グルーヴも素晴らしい曲
12曲目「All the Girls Love Alice」について
いつまで経っても若くいたい
大人になれない
不思議ちゃんに対する風刺作
かまってちゃん、そして国民にバカであって欲しい社会にさようなら
13曲目「Your Sister Can’t Twist(But She Can Rock‘n Roll)」について
いつの時代もある世代交代
若い世代のアイコン歌手と全盛期を過ぎた老いぼれ歌手が
一緒にコラボする様子を描いた作品
その歌が実は「Bannie and The Jets」という感じにも思える
昔の栄光に縋ろうとする老害心にさようなら
14曲目「Saturday Night’s Allright for Fighting」について
エルトンロックの代表曲
エルトンの反骨魂そのもの!
この世界観は色あせない
ホワイトカラー上等!
俺は絶対取り込まれないぞ!
これもある意味、さよならと言うか訣別の歌。
15曲目「Roy Rogers」について
子供の頃のヒーロー
ヒーローはいつまで経っても歳を取らない、色あせない
僕たちも苦しくなって、
誰にも言えない鬱屈とした気持ちになると
昔好きだった自分のヒーローを
夜、ひっそり思い出して、
勇気をもらってませんか?
これは子供の頃に描いていた世界が夢であった訳であり、
知らず知らずにさよならしてしまっていた世界観を
懐かしむと共に勇気を貰う歌。
16曲目「Social Disease」について
社会貢献、
出世
金
何にも役に立たないね
俺を見て見な
ボロボロだけど、
心までなくしたわけじゃねーよ
そんな社会風刺の作品
ある意味、 Goodbye Yellow Brick Roadのコミカルバージョン
17曲目「Harmony」について
エルトンの美しすぎるメロディーライン
そしてバーニーのファンタジーの世界観
いつまでも浸っていたい
そう思わせてくれる作品
さよならは自分からしなくても必ず向こうからやってくる。
だから、一緒にこの絆を大事にしましょうと言う作品。
いずれやってくる「死」「別れ」を真に理解していないと
辿り着けない達観の境地。
さて、アルバムの全体像として
成功と苦悩、疲れ、そして希望が見え隠れする内容となっている
先述の通り、
「Goodbye Yellow Brick Road」は
全ての作品に散りばめられ
反映されているように思う
一つ一つの歌詞を理解し、
アルバムを通して聞くと、
それが如実に表れている
また、エルトンは
「イギリス人は歌詞をほとんど理解していない、、、」
と例の憎まれ口を叩いているように
この深い深い作品群を
イギリス人だけでなく
日本人を含め多くの人にあまり理解されていないのではないか
と思うのだ
だから、バーニーとエルトンのメッセージを噛みしめながら
この成功と苦悩に満ち溢れた作品を聞き直していただきたいのです。